BITCOIN JAPAN 2025のDev Dayとして、Fulgur Venturesが東京で初開催した、ビルダーのためのテックカンファレンス「BUIDL」


本イベントはメインカンファレンス前日に開催された、技術領域にフォーカスしたDev Dayです。
「東京で、つながり、語り、つくる」というテーマのもと、開発者・デザイナー・起業家などのビルダーが集い、アイデアの共有やコラボレーションを通じてビットコインの未来を見据える場となりました。
本記事では当日行われたNakamoto Stageの全11セッションを紹介します。
なお、Satoshi Stageについては別記事にてまとめています。【レポート】BUIDL 2025 Satoshi Stage

 


ビットコインはどう進化するのか──プロトコル変更の仕組みと種類

Luke Dashjr
Chairman & CTO ,Lead Maintainer
OCEAN, Bitcoin Knots

ビットコインはどのように変化するのか。その前提として、まず「プロトコル変更」という言葉の混乱を整理する必要がある、という問題提起から話は始まりました。登壇者は、すべてのソフトウェア更新がプロトコル変更を意味するわけではなく、互換性を保った改良はネットワークを分断しないと説明します。一方で、トークンが分かれる変更はビットコインの進化ではなく、実質的にはアルトコインの誕生だという明確な線引きも示されました。

その上で、ソフトフォーク、ハードフォーク、拡張ブロックといった変更手法の違いや、それぞれがノードやマイナーに与える影響が整理されます。特に、過去のSegWitを巡る混乱やBIP148の事例を踏まえ、誰がどのタイミングでルールを強制するのかが重要である点が強調されました。技術論に留まらず、最終的には「何をビットコインとして受け入れるのか」というコミュニティの合意こそが、プロトコルの将来を決めるというメッセージが印象に残る内容でした。


ビットコイン助成金の歩き方

robs
Head of Operations
OpenSats
Seed
Project Creator, Leader
The SeedSigner Project ,BTC Hardware Solutions
Calvin Kim
Bitcoin Protocol Developer
Opensats Grantee

今回のセッションでは、ビットコイン開発における助成金の実情と、その活用方法について、実際の受給者と支援団体の視点から語られました。登壇者は、複数の助成金を受けて開発を続けてきた開発者、OpenSatsの運営担当者、SeedSignerの創設者で、それぞれの立場から率直な経験談が共有されました。

印象的だったのは、助成金は「安定した雇用」ではなく、計画と信頼の積み重ねで成り立つ関係だという点です。過去の成果、いわゆる作業の証明が重視される一方で、将来の計画についても完璧さより現実性が求められると説明されました。計画通りに進まなくても、理由と方向性が共有されていれば問題にならないという話は、多くの参加者の不安を和らげていたように感じます。

また、OpenSatsの支援方針として、特定の企業利益ではなく、エコシステム全体に必要だが資金が集まりにくいインフラや基盤技術を重視している点も強調されました。加えて、日本やアジア圏では文化的・言語的なハードルから応募が少ない現状が語られ、パートタイム助成や人とのつながりを通じて一歩踏み出してほしいというメッセージで締めくくられました。


OP_RETURN論争──意見の対立を超えて共に築くビットコインの未来

Rockstar Dev
Core contributor @BtcPayServer
Nicolas Dorier
Solution Architect
Digital Garage
Stephan Livera
Podcast Host
Stephan Livera Podcast

会場では、Bitcoinの「OP_RETURN」を巡る長時間のディスカッションが行われました。SNS上で続いてきた論争を、あえて対面で整理しようという試みで、冒頭から「オンラインよりも直接話す方が建設的だ」という共通認識が示されます。

議論の中心となったのは、OP_RETURNのデフォルト仕様変更がもたらす影響です。一方の立場は、Bitcoin Coreがコンセンサスルールを変えたわけではなく、あくまでノードのポリシールールの調整に過ぎないと説明します。取引の検証ルール自体は不変であり、ネットワーク分裂を招くような変更ではない、という主張です。

これに対し、反対側からは「実際のネットワーク挙動が変わったこと自体が問題だ」との声が上がりました。OP_RETURNの制限緩和によって、ブロックチェーン上にデータを載せやすくなり、UTXOセットの肥大化やノード運用コスト増加につながる懸念が示されます。特に、画像データなどがUTXOに残り続ける点は、長期的な負担として強調されました。
会場では、技術的な代替案や将来的な研究の可能性にも話題が及びましたが、最終的には「Bitcoinをどう使いたいのか」「どこまでを許容するのか」という価値観の違いが浮き彫りになります。意見は割れたままながらも、相手を悪意で断じるのではなく、共通の目的を確認し合う姿勢が印象的なセッションでした。


べき乗則から読み解くビットコイン価格

Lev Ushakov
Quantitative Researcher
Deltasoft d.o.o

ビットコインの価格や成長を「偶然」ではなく、科学的に捉え直そうという試みが紹介されました。登壇者は、ビットコインがパワー・ロー(べき乗則)に従って成長している可能性を示し、価格、アドレス数、ハッシュレートといった指標が、時間とともに安定したスケーリング関係を描いていると説明します。特に対数グラフ上で直線的な関係が現れる点は視覚的にも説得力があり、統計的な適合度も高いとされました。

議論では、ビットコインを都市やインターネットになぞらえ、複数のネットワーク層が相互に成長を促す自己強化ループが、この特性を支えているという見方が示されます。一方で、短期的な価格予測や投機的な解釈ではなく、長期的な採用と構造の理解に使うべきモデルである点も強調されました。ビットコインを一時的な現象ではなく、持続的に成長するシステムとして捉える視点を与えてくれる内容でした。


BIP352: サイレントペイメントと自己管理型ウォレットの今

Jonathan Underwood
Chief Bitcoin Officer, BitcoinJS Maintainer
Bitbank Inc.

アドレス再利用がもたらすプライバシーと安全性の問題を出発点に、BIP352として提案された「サイレントペイメント」の仕組みが解説されました。従来のウォレットでは複数アドレスを生成できるものの、静的アドレスを公開すると取引履歴や残高が第三者に把握されてしまうリスクがあります。特に物理的な脅威につながる点が、量子攻撃以上に現実的な問題として強調されました。
サイレントペイメントは、公開されるアドレス自体に支払い先を固定せず、送金トランザクションの入力情報と受信者の鍵情報から毎回異なる出力を生成する仕組みです。これにより出力スクリプトの再利用が不可能となり、外部から取引の関連性を追跡できなくなります。一方で、全トランザクションをスキャンする必要があるため実装負荷は高く、モバイル環境や取引所での運用には課題も残ります。現状では実験的な段階にありますが、静的アドレスが必要な場面における有力な選択肢として、今後の採用拡大が期待される内容でした。


LNウォレット新時代を拓くTimeout Treeの可能性

 

Kishin Kato
Director
Japan Bitcoin Industry Inc.

日本ではライトニングの利用が広がる一方で、ノンカストディアルなウォレットをどう実装するかは、依然として大きな課題だと感じました。登壇者は、規制や高い運営コストの影響により、国内でカストディアル型サービスを提供するのが難しく、多くのユーザーが海外サービスに依存している現状を説明しました。

その解決策として紹介されたのが、ARCやタイムアウトツリーといった仕組みです。これらは、ユーザーが資金の主導権を維持したまま、流動性コストや運用負荷を抑えることを目指すアプローチだといいます。完全に信頼を排した理想形にはまだ課題が残るものの、実用性を重視した現実的な妥協案として、非保管型ライトニングバックエンドの新たな方向性を示す内容でした。


メガワットからメガハッシュへ──ビットコイン・マイニングで電力産業に変革を

Kenji Tateiwa
Founder and  CEO
Agile Energy X, Inc.

日本の電力課題に対し、ビットコインマイニングを「柔軟な需要」として活用する構想が語られました。登壇者は、日本が低いエネルギー自給率と再生可能エネルギーの出力制限、送電網の混雑という構造的問題を抱えている点を指摘します。太陽光や風力が余っても使えない状況が続くなか、オンオフを即座に切り替えられるビットコインマイニングは、余剰電力の受け皿として機能すると説明されました。
実際に、送電網に接続できない太陽光発電所や、混雑が発生する地域での実証事例が紹介され、無駄になっていた電力を収益化できる可能性が示されます。さらに、マイニングの廃熱を農業やCO₂回収と組み合わせる循環型モデルにも言及され、エネルギー問題と地域活性化を同時に解決する視点が印象的でした。ビットコインマイニングを批判の対象ではなく、社会インフラの一部として再定義する試みが感じられるセッションでした。


ライトニングのラストマイル:ビットコイン決済をすべての人に

Samson Mow
Chief Executive Officer
Jan3
Neil Woodfine
CMO
Second
Stephan Livera
Podcast Host
Stephan Livera Podcast

ライトニングと各種レイヤー2が実際のユーザー体験にどう影響しているのか、「ラストマイル」の視点から率直な議論が交わされました。登壇者たちは、技術的には多くの選択肢が存在する一方で、一般ユーザーが求めているのは複雑な仕組みではなく、資金を安全に保管でき、迷わず支払える体験だと強調します。
議論では、ライトニングの流動性管理や初期オンボーディングのコストが依然として障壁になっている点や、その代替としてARCやLiquid、eCashといった仕組みが注目されている背景が整理されました。また、手数料の急騰やネットワーク混雑といった出来事が、ウォレット設計やユーザー行動に長期的な影響を与えてきたことも共有されます。最終的には、すべてのトレードオフを前面に出すのではなく、UXを中心に据えつつ、裏側で適切な技術を選び取ることが、ビットコインを現実世界に広げる鍵になるという認識が示された内容でした。


ビットコイン UX/UI の最適解──ユーザー体験をデザインする

Daniel James
CEO
Wallet of Satoshi
Kevin Loaec
CEO
Wizardsardine, Liana
Simon Lindh
Co-founder
Mempool Space K.K.
Koji  Higashi
CEO
Diamond Hands

ビットコインウォレットにおけるUI/UXの難しさが、率直な言葉で語られるパネルとなりました。登壇者たちはまず、多くのウォレットが「開発者視点」で作られており、機能を追加すること自体が目的化してしまいがちな点を問題として挙げました。本当に重要なのは安全性や主権といった核心部分であり、UXは常に取捨選択が求められるといいます。

議論では、サトシ単位かビットコイン単位かといった表示方法や、支払い進行を可視化する小さな演出がユーザー体験に与える影響も紹介されました。一方で、過度な簡略化は中央集権的な体験に戻ってしまうリスクがあり、誰のために作るのかを常に意識する必要があるという指摘も印象的でした。

最終的には、ウォレット同士の相互運用性を高め、良いUI/UXを積極的に学び合うことが、ビットコイン全体の体験向上につながるという共通認識が示され、実践的な示唆に富んだ内容となりました。


ビットコイン企業とVCマネー──敵か味方か?

Oleg Mikhalsky
Partner
Fulgur Ventures
Jack Lee
Founding Managing Partner
HCM Capital
Stephan Livera
Podcast Host
Stephan Livera Podcast

ビットコイン企業とベンチャーキャピタル(VC)の関係について、率直な意見が交わされるセッションとなりました。登壇者たちはまず、VCマネーが開発スピードや事業規模を押し上げてきた一方で、ビットコインの思想や長期的な健全性と必ずしも一致しない場面があると指摘します。短期的な成長やリターンを求める資本論理が、プロダクト設計や意思決定に影響を与えてきたという問題意識が共有されました。

議論では、資金調達によって企業が中央集権化しやすくなるリスクや、ユーザー主権を損なう可能性についても触れられます。その一方で、すべてのVC投資が否定されるわけではなく、価値観を共有した資本とどう向き合うかが重要だという意見も出ました。最終的には、ビットコイン企業は「何のために資金を使うのか」を明確にし、資本に使われるのではなく、主体的に活用する姿勢が求められるというメッセージが印象に残る内容でした。


Proof-of-Hubs──なぜ物理拠点が重要なのか

Rogzy
Co-founder, Director of Education
Plan ₿ Network
Mir Liponi
Hubs Director
Plan ₿ Network
Piriya Sambandaraksa
CEO
Rightshift

ビットコインにおける物理的な空間の重要性をテーマに、コミュニティハブの役割が語られました。登壇者は、オンラインでは得られない偶発的な出会いや信頼関係こそが、エコシステムを前進させてきたと振り返ります。実際に、カフェやコワーキングスペースといった場から、小さな集まりが生まれ、やがてスタートアップやプロトコル開発につながった事例が紹介されました。

議論では、こうした物理拠点を持続させる難しさにも触れられ、カフェ併設や教育、イベントなどを組み合わせた現実的な運営モデルが模索されている現状が共有されます。重要なのは、場所そのものではなく、継続的に人が集い、自由に対話できる環境を育てることだという点が強調されました。デジタル化が進む時代だからこそ、リアルな場が果たす役割の大きさを再認識させる内容でした。

  • 日付: 2025年11月23日
  • 時間: 10:00 - 18:00 (Asia/Tokyo)
  • 会場: Tokyo Bitcoin Base

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