【レポート】TBB TERAKOYA++ ~HWW気になってる人集合っ!

はじめに
新宿四谷のTBB(TokyoBitcoinBase)で開かれた「TERAKOYA++」に参加し、ハードウェアウォレット(HWW)をテーマにした実践的な講義を受けてきました。
当記事は、イベントを参加者視点でまとめたレポートとなっております。
※TERAKOYA++とは…経験を問わず誰でもビットコインについて学べる場としてTBBが開催しているイベントです
オープニング
勉強会はTBBスタッフの挨拶と簡単な自己紹介から始まりました。
序盤で特に強調されたのは以下の3点です
・秘密鍵は絶対に他人に見せない
・ニーモニック(復元フレーズ)は写真などで保存しない
・資産保護にはハードウェアウォレットが有効
秘密鍵が漏洩した際のリスクと、物理デバイスで管理することがいかに大切かを身を以て学べる内容となっていました。
まず押さえたい基本
今回のテーマの柱は大きく3つありました。
・1つ目はホットウォレットとコールドウォレットの違い
スマホやPCのソフトウェアウォレットは利便性が高い一方、オンライン環境で秘密鍵を保管するため、ハッキングなどのリスクに晒されます。
それに対してハードウェアウォレットはデバイス内に秘密鍵を閉じ込め、署名処理もデバイス内で完結させるため安全性を高められるとのことでした。
・2つ目はニーモニックと秘密鍵の関係
今回のTERAKOYA++では「ニーモニック=秘密鍵みたいなものである」という点が解説されていました。
ニーモニック(復元フレーズ)から決められた手順に従って秘密鍵が生成され、そこから拡張公開鍵やアドレスが段階的に導き出される仕組みについても触れられました。
「ニーモニック → 秘密鍵 → 拡張公開鍵 → アドレス」という大まかな流れが理解できたことで、 ウォレットが“単なるアプリ”ではなく、一貫したルールに基づいて鍵を管理する仕組みであることがより明確になりました。
また、BIP(Bitcoin Improvement Proposal)の標準に沿って実装されているウォレット同士であれば、同じニーモニックを入力することで同じ秘密鍵やアドレスを再現できることも実際の操作を通して確認できました。
このことから、資産が「ウォレットの中に入っている」のではなく、共通の手順に沿って鍵が生成されているために、別のウォレットでも同じ状態を復元できる仕組みなのだと理解できました。
・3つ目はBIPと“業界標準”
ウォレットの動作はBIPによって標準化されており、広く使われている実装同士では互換性が保たれています。
ただし、SLIPなど別の系統の仕様が採用されている場合もあり、その場合は復元の手順や生成されるアドレス体系が異なることがあります。
そのため、既存のウォレットと組み合わせたり乗り換えたりする際には、「同じ標準に基づいているか」を確認することが実務上の大切なポイントとして挙げられていました。
送金の仕組みを体験で理解
デモンストレーションでは
トランザクション作成→署名→ブロードキャスト の一連の流れが実演されました。
コンパニオンアプリ側で未署名の取引データを準備し、ハードウェアウォレット内部で秘密鍵により署名を行う手順も実演されました。
このとき、秘密鍵はデバイスの外へ出ることはなく、署名済みのデータだけがネットワークに送られます。
取引が送信されたあとは、mempool.space などのブロックエクスプローラーを使って、実際にブロックに取り込まれていく様子をその場で確認できました。
また、手数料は送金側が負担すること、取引所内での資産移動はオンチェーンではなく内部の帳簿処理であり外部へ出庫する際に初めてオンチェーンの取引になる点もわかりやすく説明されていました。
デバイスの種類とエアギャップ運用
会場には Trezor(タッチ式の新モデルの話題も含む)、Ledger、Blockstream Jade、そして SeedSigner が並んでいました。
特に印象的だったのは、「エアギャップ」での運用方法の紹介です。
データの受け渡しを QR コードや microSD で行い、デバイス自体をネットに接続しない運用が可能であることが示されました。
なかでも SeedSigner は、電源を切るたびに内部が初期化される「ステートレス」設計が特徴的でした。秘密鍵をデバイス内に保持しない一方で、毎回セットアップが必要になるため、利便性とのトレードオフが明確に理解できました。
また、拡張公開鍵を用いて「ウォッチオンリー」環境を構築するデモも行われました。
秘密鍵を保持しない状態で残高や入出金履歴のみを確認できるため、監視用途に適した構成です。実際の運用では、送金時にだけ署名可能なデバイスを呼び出す形が現実的であると感じました。
バックアップと保管のベストプラクティス
ニーモニックの保管については、紙に書き留めるだけでは十分ではないことも指摘されました。
水濡れや火災などで失われる可能性があるため、メタルプレートを用いて物理的な耐久性を高める方法が紹介されました。
また、写真に撮ったりクラウドに保存したりすることは情報漏洩のリスクが大きいため、避けるべきだという点が強調されました。分散保管やラミネートなど、各自の環境に応じて工夫することが大切です。
ただし、方法を複雑にしすぎると「自分で復元できなくなる」いわゆるセルフゴックスを招く可能性があるため、最終的には自分自身が無理なく再現できる設計にすることが前提となります。
マルウェアとフィッシング対策
リンクを踏むだけでマルウェアに感染し、ホットウォレットの秘密鍵が盗まれる事例があることも共有されました。
特に「ミーティングアプリを入れてください」と誘導して正規の手順に見せかける手口が増えているとのことです。
ハードウェアウォレットは秘密鍵を外に出さない点で安全性が高い一方、コンパニオンアプリや接続する PC・スマホ側の環境管理は依然として重要です。
また、公式サイト以外からの購入やマーケットプレイス経由で「開封済み」のデバイスを避けるといった、具体的な購入時の注意点も実務的に示されていました。
取引所との付き合い方
国内の取引所では、出庫の際に本人確認や送付目的の選択が求められることがあります。
これは法規制上のフリクションではありますが、最終的に自分のウォレットで長期保管する場合には、こうした手続きが必要になる場面が出てきます。
アドレス形式については基本的に互換性がありますが、新旧形式が混在しているケースもあるため、送金時には受取側がどの形式に対応しているかを確認しておくことが安全策となるとのことでした。
触って分かったこと(所感)
実際にデバイスに触れてみると、セキュリティと利便性のどこにバランスを置くかが自分自身の課題として見えてきます。
Trezor は操作が直感的で扱いやすく、Jade のエアギャップ運用は「資産を守るための一手間」として自然に受け入れられる印象でした。
SeedSigner は学習コストがかかる反面、ステートレスであることによる安心感は高く、用途がはっきりしているデバイスだと感じました。
どれが絶対的な正解というよりも、保有額・運用頻度(削除しました)などに応じて複数の手法を「組み合わせていく」ことが現実的だと感じました。
まとめ
今回の TERAKOYA++ は、ハードウェアウォレットの仕組みを「体験しながら」理解できる良い機会でした。
エアギャップなどといった構成を知っておくだけでも、ライトユーザーが取れる選択肢は大きく広がりそうです。ビットコインを長期で守っていく上で、今日の学びは確かな投資になるものだと感じました。
なお、デバイスを導入する際は、各メーカーの公式サイトから正規品を購入し、自分自身が再現できる形でニーモニックを確実に保全することが前提となります。
ハードウェアウォレットは「持っているかどうか」ではなく、どのように運用し、自分が再現できる状態に保てるかが本質だと強く感じました。
今後もTERAKOYA++では誰でもビットコインを学べる場としてイベントを行っていますので、興味が湧いたら、ぜひ皆さんも参加してみてください!
